いびきのダイエット治療
いびきを持つ人の約30%に睡眠時無呼吸症候群があるとされています。その睡眠時無呼吸症候群の中でも、呼吸の通り道が狭くて無呼吸となる閉塞性睡眠時無呼吸症の70%に肥満であり、逆に肥満を持つ人の約40%に閉塞性睡眠時無呼吸症を認めるとアメリカから報告されています。1997年のフランスによる研究では、肥満度2(BMI>30)の患者さんの26%に中等症、60%に軽症の睡眠時無呼吸症が認められ、肥満度4(BMI>40)では33%に中等症、98%に軽症の睡眠時無呼吸症が認められたと報告しています。肥満指数(BMI)が高いほど、睡眠時無呼吸症の重症度が悪化することがわかります。閉塞性睡眠時無呼吸症になってしまう確率は、体重が10kg増えるごとに2倍、BMIが6増えることに4倍、腰回り、おしり周りの長さが15cm増えるごとに4倍増加するとも報告されています。2013年インドから349名を対象とした研究では、肥満度0の人と肥満度1以上の人では明らかにいびきの罹患率に差があることを報告しています。このように肥満といびきや睡眠時無呼吸症は強く関係していることがわかりますが、なぜ関係があるのでしょうか?
首回りに脂肪がつくことによって舌が後方に押し出され、のどの裏側にも脂肪がつくことで後壁が前方に押し出され、呼吸の通り道が前後からの圧迫で狭くなります。扁桃腺の裏側にも脂肪が付きますので扁桃も内側に張り出してきます。脂肪は口蓋垂(のどちんこ)を支えている軟口蓋にもつくので、軟口蓋が厚くなり口の中がさらに狭くなります。このように、形態的に周囲の圧迫を受けることでのどが狭くなり、そこを空気が流れることによっていびき、閉塞性睡眠時無呼吸が生じます。また、内臓脂肪型肥満の場合は腹部に脂肪がたまることにより肺のふくらみを邪魔したり、気管を圧迫することにより空気の通り道が狭くなったりすることも睡眠時無呼吸を起こします。
1980年後半にアメリカやカナダでの研究より、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の患者さんの体重を約15%減量すると、のどの空間が拡がることを報告しています。肥満度4の患者さんに10%体重を減量させたら首回りの脂肪が減少し、無呼吸が改善されたことが2009年アメリカから報告されています。一方、BMIが30未満(肥満度1以下)の患者さんに体重減量させても睡眠時無呼吸の改善が認められなかった報告もあります。つまり、肥満度0〜1の人がダイエットをしてもいびきや睡眠時無呼吸が改善する可能性が低いことがわかります。
当院の患者さんに、体重減量の話をすると「ジムに通うようにしました」と答える方がいます。カロリー制限をしないで、同じ運動量を12週間継続した58人の肥満患者さんの研究では、体重減量が人によって様々であったとイギリスから2009年に報告されています。つまり、運動だけでは体重減量は難しいことを示しており、カロリー制限がとても重要であることがわかります。しかし、カロリー制限を長期間継続することは難しく、1931年から69年間に報告された論文をまとめてみると約5年間の経過観察でカロリー制限の継続が15%しか成功していないことを2000年にデンマークから報告されています。このことから、継続的な体重減量を成功させるためには、カロリー制限と運動の両方が必要です。2013年イギリスからの報告では、信用ある12の論文を解析してみると、ダイエットだけよりもダイエット+運動を含めた生活指導の方が、体重減量に成功し睡眠時無呼吸が改善していることを示しています。
当院では、なぜいびきが生じているのかを診断し適応のある患者さんに対しては、レーザーによるいびき治療を保険診療で行っています。口蓋垂とその周辺の軟口蓋を切除し糸で縫い上げることで上気道を広くし、いびきや睡眠中の呼吸状態を改善します。BMIが30以上の肥満があり睡眠時無呼吸をともなっている場合は、まず体重の減量とCPAP治療やマウスピース装用を勧めます。いびきについて悩んでおり、治療について診察を受けたい方は当院へ気軽にご相談ください。
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