扁桃肥大といびき
風邪をひいて扁桃(へんとう)を腫らし、息が苦しくなったことを経験した人もいると思います。扁桃肥大は、実際にのどを狭くさせるため、睡眠時無呼吸症候群の原因の一つとして考えられています。特に小児の場合は、睡眠時無呼吸症状の80-90%が扁桃肥大であると過去に報告されています。今回は成人の扁桃肥大といびきの関係を解説します。
まず、扁桃について解説します。一般的に「扁桃腺(へんとうせん)」と呼ばれていますが、扁桃はリンパ組織であり腺組織ではないために「扁桃」が正しい呼び名です。
扁桃は、咽頭扁桃、口蓋扁桃、舌扁桃、耳管扁桃、咽後扁桃(孤立リンパ節群)とあり、その中でも最も大きいのが口蓋扁桃です。それぞれの扁桃が気道と消化管の入口にネックレス状に分布していて、ワルダイエル咽頭輪とも呼ばれます。
扁桃は、外から入ってくる菌などと直接接触し、免疫応答の場として機能しています。口蓋扁桃は口を開けると見え、のどが痛くなる急性扁桃炎を起こす代表的な扁桃です。咽頭扁桃は4〜5歳、口蓋扁桃は7〜8歳まで増大し、10歳頃より自然萎縮すると報告されています。つまり、小児の場合はもともと扁桃が大きいために気道を狭くさせ、睡眠時無呼吸の要因となりやすいことがわかります。
先に述べたように、扁桃肥大は小児の睡眠時無呼吸症候群の主要因と考えられています。睡眠時無呼吸症候群の患者さんはいびき症状を90〜98%持っており、いびきと睡眠時無呼吸症候群は強く関係しています。
そのためにいびきを持つ小児の場合は、睡眠時無呼吸の検査を行い閉塞性睡眠時無呼吸症候群と診断され、鼻閉の治療など薬物療法を行うも改善が認められず、高度な咽頭扁桃肥大(アデノイド)・口蓋扁桃肥大を認めた場合は積極的に扁桃・アデノイド手術の適応となります。
では、10歳頃より自然萎縮するとされている扁桃は成人のいびきに影響を与えるのでしょうか?
2018年東京医科歯科大学の研究チームが、10年間経過を追うことのできた90名の側面レントゲンにて口蓋扁桃の加齢変化を測定し、6歳から成人までの萎縮が軽度であることを報告しています。このことから、口蓋扁桃の大きさは成人になってもある程度あることを示しています。
しかし、首の太さも年齢とともに大きくなりますので、のどの内腔を占める扁桃の大きさは相対的に小さくなることを意味します。実際に、2018年ワシントン大学の研究チームが、18歳以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群の患者さんで口蓋扁桃摘出を行った83名の摘出した扁桃の大きさと術前に口から観察した扁桃の大きさとを、睡眠時無呼吸の程度と比較した報告があります。この研究にて、実際に摘出した扁桃の大きさと睡眠時無呼吸の程度の関係性は認められませんでした。しかし、口から観察した扁桃の大きさと無呼吸の程度は関係性が認められました。
つまり、のどを観察し見た目で扁桃の大きい方が、睡眠時無呼吸の程度が悪い傾向になることがわかったのです。成人の扁桃が見た目で大きい時とは、喫煙や飲酒など慢性の扁桃炎で実際に扁桃が肥大している場合や肥満により首に脂肪が蓄積し扁桃が内側に押し出される場合などがあります。成人でも、このような時は口蓋扁桃を切除することでいびきや睡眠時無呼吸症候群が軽減する可能性があります。
当院では、なぜいびきが生じているのかを診断しています。適応のある患者さんに対しては、レーザーによるいびき治療を保険診療で行っていますが、扁桃が大きい場合は扁桃切除を行ってもらえる病院を紹介しています。
外科的な治療ばかりがいびき治療ではありません。BMIが30以上の肥満があり重症な睡眠時無呼吸をともなっている場合は、まず体重の減量とCPAP治療やマウスピース装用を勧めます。
いびきについて悩んでおり、治療について診察を受けたい方は当院へ気軽にご相談ください。
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