東京新宿声がれといびき東京ロンフェルメ耳鼻いんこう科

はじめに

当院をいびき治療目的で受診される患者さんの中には、朝起きて声が嗄（か）れていることを訴える人がいます。いびきが声をからすこと（嗄声）を起こすのでしょうか。今回はこのことについて述べます。

嗄声とは

声は喉頭の一部である声帯が振動することで生じます。声帯の位置は外からみると、ちょうどのど仏の裏側に位置します。嗄声は主にこの声帯の異常で生じます。
声帯に異常を起こす主な病気は、大きく3つに分けることが出来ます。最も頻度が高いのが感冒などで声帯に炎症をおこす場合です。他には、声帯ポリープ、声帯結節、喉頭がんなど声帯に腫瘤ができる場合や声帯の動きが悪くなる反回神経麻痺などの場合があります。
喉頭の炎症が強かったり、反回神経麻痺により声帯が動かなくなったり、声帯にできた腫瘤が大きかったりすると、寝ていなくても呼吸時に狭くなった気道を空気が流れ音を出します。これは、いびきではなく喘鳴（ぜんめい）といいます。

いびきと嗄声

いびきは睡眠中に、鼻やのどなど空気の通り道（気道）の狭い部分に主に吸気時に空気がぶつかり、振動しておこる異常な呼吸音のことです。
嗄声をおこす病気の中に気道を狭くさせるものもありますが、先に述べた通り喘鳴といびきは異なります。
2012年レバノンにあるベイルート・アメリカ大学から、いびきを主訴に受診した30名といびきの無いコントロール群30名に対しアンケート調査を行い比較したところ、いびき群の約40%、コントロール群の10%に嗄声が認められ両群に差があることを報告しています。つまり、いびきと嗄声は関係があることを意味しています。なぜいびきのある人に嗄声のある確率が高くなるのでしょうか。

まず、喫煙の関与があります。
喫煙は声帯に炎症を起こす可能性が高く、嗄声の原因となります。一方、アイスランド、エストニア、デンマーク、ノルウェー、スウェーデンの大学による2004年の共同研究では、非喫煙者に比べ喫煙者や受動喫煙者にいびきの認められる確率が1.5倍高いことが示されています。タバコの煙により鼻やのどの粘膜、扁桃が慢性炎症を起こし腫れるために気道が狭くなり、いびきが生じると考えられています。

次に、胃食道逆流症（逆流性食道炎）の関与があります。
胃食道逆流症は、さまざまな原因によって頻繁に胃の内容物が食道へ逆流すると胃酸によって胸やけや口の中の酸っぱい感じが生じる病気です。胃液が喉頭まで上がってくると、喉頭の粘膜に炎症がおこり、のどの痛みや圧迫感をきたし、声帯まで影響が及ぶと嗄声が生じます。2009年に大阪市立大学から閉塞性睡眠時無呼吸症候群の患者さんが胃食道逆流症を持っている有病率は20〜40％と高率であることを報告しています。上気道狭窄が気管内圧を低下し気管と隣同士である食道内への酸逆流を助長させるなどがその原因とされています。

そして、口呼吸の関与です。鼻から息を吸うとその空気は加温加湿、除塵をされるため肺が保護されます。外気湿度が15%であっても鼻呼吸で咽頭は常に湿度を70〜80%に保つことができます。また鼻から息を吐くと、鼻の解剖学的抵抗から気道内圧が保持され肺での換気能力が上昇します。
このように鼻呼吸は体に良いことがわかります。声帯は常に薄い水の被膜で被われています。この水の被膜が、バリアとなり被膜下の組織を粉塵や病原体を守る役目を担っています。鼻炎や鼻中隔弯曲症などで鼻閉が生じ睡眠中に口呼吸となると、乾燥した空気が直接に気道に入ってくることとなります。そのために声帯が乾燥し、炎症を起こしやすくなり、嗄声となります。
口呼吸は鼻呼吸に比べ、間口が変化する口唇や舌があるために空間が不安定であり、吸気圧が上昇しやすく、軟口蓋や舌根部が振動しやすくなりいびきをかきやすくなります。

このように、いびきを起こしやすい状態は嗄声を起こす可能性も高いことがわかります。以前に比べ声が嗄れやすくなった、風邪をひいていないのに嗄声が続いている場合は耳鼻咽喉科を受診することをお勧めします。いびきを起こしている可能性もあります。

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当院の治療

当院では、なぜいびきが生じているのかを診断しています。
適応のある患者さんに対しては、レーザーによるいびき治療を保険診療で行っていますが、外科的な治療ばかりがいびき治療ではありません。肥満があり重症な睡眠時無呼吸をともなっている場合は、まず体重の減量とCPAP治療やマウスピース装用を勧めます。
いびきについて悩んでおり、治療について診察を受けたい方は当院へ気軽にご相談ください。