睡眠時無呼吸症候群の治療
睡眠時無呼吸症候群の多くは呼吸の通り道が狭くて無呼吸となる閉塞性睡眠時無呼吸症であることから、気道を拡げることがその治療法となります。
肥満の場合は、体重を減量することにより首回りの脂肪が減り咽頭のスペースが拡がります。マウスピースによって舌が収まっている下あごを数ミリ前方に突き出し固定させ、舌が落ち込まないようにして気道を拡げる方法もあります。鼻閉やのどの狭さを手術によって拡げる方法もあります。
狭くなっている部分を一定の空気圧で拡げる治療が持続陽圧呼吸療法(CPAP)です。CPAPは睡眠時無呼吸症候群に対して有効な治療であるとされています。検査にて中等度以上の睡眠時無呼吸を認めた場合、日本でもCPAPが治療の第一選択と考えられています。
しかし、マスクをして一定の空気圧をかけられながら睡眠をするために、わずらわしく装用をやめてしまう人も少なくありません。特に鼻中隔弯曲やアレルギー性鼻炎、鼻ポリープなどで鼻閉があると抵抗が高く、かけられる圧力も高くなるために苦しくなりCPAP装用ができない人もいます。また、高度肥満がありCPAP装用した場合は、肥満を解消することによりCPAPも離脱できる可能性がありますが、基本的にCPAPは保存的治療であるために装用を継続しなくてはいけません。
最近は閉塞性睡眠時無呼吸症候群にCPAPを導入し、閉塞タイプの無呼吸は改善しても中枢タイプの無呼吸が顕著になるComplex sleep apnea syndromeの存在が指摘されており、今後その動向が気になります。
鼻中隔弯曲に対する鼻中隔矯正術、アレルギー性鼻炎や肥厚性鼻炎に対する下鼻甲介切除、下鼻甲介粘膜焼灼術、下鼻甲介粘膜下凝固手術、慢性副鼻腔炎や鼻ポリープに対する副鼻腔手術、鼻ポリープ切除術は鼻閉を改善させ、いびきや睡眠時無呼吸症を治療する手術です。しかし、鼻閉改善手術のみでは睡眠時無呼吸症の改善率は10~15%と報告されています。
舌が大きい巨舌症や顎が小さく相対的に舌が大きい場合に対する舌のボリュームを減少させる手術や顎の骨を前方に移動させのどのスペースを拡げる手術は大がかりで一般的なものではありません。
首に穴を開けて空気の通り道を人工的に作る気管切開術は睡眠時無呼吸症候群に対して昔からある手術方法ですが、開けた穴の管理が難しくこれも一般的ではありません。
口蓋扁桃肥大やアデノイド肥大に対する扁桃摘出術、アデノイド切除術は閉塞性睡眠時無呼吸症候群の治療として効果があることは示されており、特に小児の睡眠時無呼吸症候群に効果があることが数多く報告されています。
1950年代よりいびきに対する咽頭腔拡張術が池松武之亮先生によって始められ、それをもとに1981年東京大学の藤田史郎先生が睡眠時無呼吸症に対して口蓋垂軟口蓋咽頭形成術(Uvulopalatopharyngoplasty:UPPP)を開発し世界中で行われるようになりました。UPPPは扁桃腺をとり、上あごである軟口蓋粘膜とのどちんこ(口蓋垂)の一部を切除して縫い合わせ、のどの空間を拡げる手術です。
パリのKamami先生が1990年にレーザーを用いて口蓋垂と軟口蓋粘膜を切除するレーザー口蓋垂軟口蓋形成術(Laser assisted uvulopalatoplasty : LAUP)を発表しました。LAUPは局所麻酔で行い入院を必要としないことからUPPPに代わり広く行わるようになりました。
UPPPにしてもLAUPにしてもいびきに対しての効果は世界中で認められていますが、睡眠時無呼吸症に対しての効果は現在も議論されています。その効果について各国の報告にバラツキがあるためです。
それら報告によるとUPPPの睡眠時無呼吸症の改善率は8%~80%です。これは改善率の定義や対象者にバラツキ(例えば太っている割合や無呼吸の程度など)があるからです。
ただし、最近のいくつかの検討から肥満指数(BMI)が30前後の中等度睡眠時無呼吸症に対しては約40%の治癒率(無呼吸指数が5以下)であることが示されています。これを治癒率が低いと考えるのか、継続的なCPAP装用から40%離脱することができると考えるのかは人によると思います。
重度閉塞性睡眠時無呼吸症候群でCPAPの持続圧が高くて装用が苦しく継続できない患者さんがUPPPやLAUPを行い、咽頭の抵抗を減らすことにより持続圧が低下し、CPAP装用が安定した報告もあります。世界屈指の名門校であるアメリカのスタンフォード大学からの報告では、軽度睡眠時無呼吸症の場合はUPPPよりLAUPの方がコストパフォーマンスは高いことを示しています。睡眠時無呼吸症候群に対してCPAP治療は基本ですが、今までの報告から患者さんによってはUPPPやLAUPを施行することによってCPAPの装用の持続安定や離脱することができることがわかります。睡眠時無呼吸症候群の治療の選択肢はいくつかありますが、その方法は治療費で決めることではなく、睡眠時無呼吸症の原因や重症度で選択されるものですので、専門の医師による診察が必要です。
当院では、睡眠時無呼吸症の患者様にはアプノモニターを用いてその重症度を測定し、鼻腔通気度計を用いて鼻閉の具合、ファイバースコープを用いて咽頭の狭小の具合を客観的に評価します。
アレルギー性鼻炎や肥厚性鼻炎による鼻閉がある場合はレーザーによる粘膜焼灼にて鼻閉の改善を試みます。
鼻ポリープや鼻中隔弯曲症による鼻閉に対しても日帰り手術を行っています。口蓋垂の肥大、軟口蓋低位に対する咽頭狭小が認められる場合は、口蓋垂とその周辺部をレーザーで切除し、糸で縫い上げることで上気道を広くしていびきや睡眠時無呼吸を解消しています。
すべて保険診療で行っています。しかし、BMIが30以上の肥満があり睡眠時無呼吸を伴っている場合や無呼吸の程度が重症な場合は、まず体重の減量やCPAP治療を勧めています。CPAP治療を行っているのに装用が苦しくてつけることが困難な場合は、鼻腔狭窄や咽頭狭窄が高度な可能性があります。
当院では、CPAP治療が必要な患者様にはその装用が安定できるようその原因診断に努めています。下顎が小さかったり咬合不全があったりして、舌がのどに落ち込みやすくなり仰向けで寝るときに無呼吸となる体位性睡眠時無呼吸症に対しては歯科の先生と相談しマウスピース作成を行っています。当院では睡眠時無呼吸症の健康診断も行っています。手術だけのクリニックではありませんので、気軽にご相談ください。
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