高齢者のいびき

今までの研究から成人の30%以上に慢性的ないびきを伴っていると報告されています。男性に多く認められ、男性:女性は2:1とされています。
いびき症状は加齢とともに増え、2002年英国からの報告では20〜30歳代の約30%、40〜50歳代の約50%、60〜70歳代の約40%にいびきを持っていると報告しています。60歳以上なるといびき症状を持つ人の割合が減ってくる理由はわかっていませんが、いびきを持つ人の生存率が減少するからかもしれません。
また、男女比は加齢とともにその比率は少なくなり60歳以上になると男性:女性は1.5:1と報告されています。つまり、年齢とともに女性のいびきが増えることを意味しています。
慢性いびきの30~50%に睡眠時無呼吸・低呼吸を伴っていると考えられています。一般的に睡眠時無呼吸の診断に行われているポリソムノグラフィーという検査から出される睡眠時無呼吸低呼吸指数は、年齢とともにその数値が増加することも報告されています。
睡眠時無呼吸症候群の診療ガイドライン2020でも50歳代の女性で10%弱、男性で10〜20%程度であり、70歳以上の女性では10%を超え、男性では20%を超える報告が多く、高年齢層で有病率が高いと示しています。
このように、加齢とともに慢性いびき症の人が増え、さらに睡眠時無呼吸・低呼吸の割合が増えてくることがわかります。
睡眠は、動物界全体の進化において保存された生理機能であり、発達、認知機能、健康寿命に深い影響を及ぼします。理想的な睡眠時間は、乳児:12〜16時間、1〜2歳:11〜14時間、3〜5歳:10〜13時間、6〜12歳:9〜12時間、13〜18歳:8〜10時間、成人:7〜9時間、高齢者では7〜8時間と推奨されています。
加齢により睡眠時間が短くなりますが、60歳を超えてくると、眠れない、途中で起きる、日中に強い眠気があるなど睡眠障害を訴える人が増えてきます。高齢者における睡眠障害の原因は色々(多因子性)ですが、加齢による睡眠調節の神経生理学および神経化学の変化により、睡眠タイミングの進行、睡眠の断片化の増加、夜間覚醒の延長、徐波睡眠の減少などの睡眠変化を起こすと考えられています。
これらの加齢性変化は、慢性不眠症、睡眠呼吸障害など様々な睡眠障害を起こしやすくなることが報告されています。
睡眠障害、特に睡眠時無呼吸症候群は、頭痛や胃腸障害に次ぐ高齢者の3番目に多い疾患と言われています。
高齢者が睡眠時無呼吸・低呼吸を伴っている場合、最も多い症状はいびきと日中の眠気です。それ以外に、不眠症、夜中に大声で叫んだり興奮したりする異常行動、日中の意識低下、集中力低下、簡単なことが記憶できない記銘力障害や認知症を起こすことが報告されています。
高血圧症、不整脈、狭心症や心筋梗塞、糖尿病などを合併することもわかってきました。加齢性筋肉減少症(サルコペニア)と睡眠時無呼吸症候群の関係も示されています。また、夜間頻尿を起こし睡眠障害を助長させます。
治療されていない睡眠時無呼吸症候群は、寿命を最大で20年短縮させる可能性があるとも報告されています。難治性の高血圧や不整脈があり、いびきや睡眠時無呼吸を伴っている患者さんが睡眠時無呼吸の治療を受け、高血圧や不整脈の症状が改善されることは過去の論文で示されています。
中高齢者のいびきはいろいろな病気の増悪因子となることがあるので、決して放置して良いものではありません。医師の診察を受けることをお勧めします。
加齢とともにいびきや睡眠時無呼吸低呼吸の症状が多くなる原因は、いくつか指摘されています。長年にわたるいびきから口蓋垂(のどちんこ)が大きくなり、さらにいびき症状を悪化させている、口から肺に入るまでの空気の通り道(上気道)を拡げる筋肉の反応が弱まるために上気道が狭くなりやすい、体内のコラーゲンが減少するために気道の弾性力が低下し狭くなりやすい、肺活量(下気道)が小さくなることから上気道も連動してのどが狭くなりやすい、脳梗塞など呼吸制御機構が障害されることにより呼吸コントロールが不安定になりいびきが生じる、など様々な原因が複雑に関係していると考えられます。
女性ホルモンは舌を支えるオトガイ舌筋という気道を拡げる筋肉を緊張させる作用があり、女性の場合は閉経後にこの筋肉の緊張が落ちてしまいのどが狭くなりやすくなることがわかっています。急にいびきをかくようになった場合は脳梗塞や舌がん、喉頭がんなどの可能性があります。専門の医師による診察をお勧めします。

まず、上気道の筋肉の衰えを防ぐために、口腔咽頭のエクササイズがあります。舌や咽頭の筋肉の運動を一日3回行う方法をホームページに記してあります。参考にしてください。
中等度から重度な睡眠時無呼吸低呼吸症候群の治療には持続陽圧呼吸療法(CPAP)やマウスピースが有効です。中枢性の無呼吸低呼吸や肺活量の低下などによる無呼吸低呼吸にはCPAPで対応するのが良いでしょう。
しかし、友人と旅行するときに装置を持って旅先で装着することも躊躇してしまいます。中等度以下の睡眠時無呼吸で、明らかな脳梗塞などの脳障害や神経疾患を伴っていない場合は、マウスピースがコンパクトで良い適応と考えます。しかし、マウスピースにていびき症状が改善しない場合は鼻が狭い、またはのどの狭さが高度であるなどの可能性があります。マウスピースの効果がない場合、マウスピースやCPAPの装用が難しい場合は、耳鼻咽喉科にて上気道をチェックしてもらうことをお勧めします。
当院では、なぜいびきが生じているのかを診断しています。
適応のある患者さんに対しては、レーザーによるいびき治療を保険診療で行っていますが、外科的な治療ばかりがいびき治療ではありません。
肥満があり重症な睡眠時無呼吸をともなっている場合は、まず体重の減量とCPAP治療やマウスピース装用を勧めます。
いびきについて悩んでおり、治療について診察を受けたい方は当院へ気軽にご相談ください。
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