心臓病といびき
日本人は脳卒中による死亡率が高く、「胸が痛い」や「胸が苦しい」などの症状を起こす心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患のリスクが低いことが、今までの特徴でした。近年日本の食生活、生活習慣の欧米化が進んだことにより、脳血管疾患による死亡率は1970年代より着実に減少しているのにも関わらず、心臓病は1985年に死亡率第2位となりその後増加傾向です。高血圧を除く心疾患の患者総数は173万人、狭心症を含めた虚血性心疾患は72万人と2017年の厚生労働省の統計で報告されています。医師から「心筋梗塞」といわれたことのある人は男性の2.7%、女性の0.9%、「狭心症」といわれたことのある人は男性の3.8%、女性の2.7%と2010年国民健康調査にて厚生労働省から発表されています。このように男性は女性に比べ約2~3倍高い発症率です。
2018年の人口動態統計から高血圧を除く心疾患の年間死亡数は20万8千人です。急性心筋梗塞などの虚血性心疾患による死亡率はその約1/3を占めており、男性の62~65歳、女性の70~74歳に最も多く発症すると報告されています。心臓を養っている動脈(冠動脈)が動脈硬化や痙攣をおこして狭くなり、十分に血液が心臓にいかないために胸痛や圧迫感が生じる状態を狭心症といいます。狭心症から心筋梗塞へ移行する割合は5年で約25%とも報告されています。このように狭心症は心筋梗塞の前段階ともいえます。心筋梗塞や狭心症となる危険因子については今まで多く研究されており、高血圧、糖尿病、喫煙、高脂血症、多量飲酒などが指摘されています。
1980年代より虚血性心疾患、不整脈、高血圧、心不全などの循環器疾患がいびきや睡眠時無呼吸症候群と関係があることが報告されています。睡眠時無呼吸症候群は、虚血性心疾患の30%以上、急性心筋梗塞の50%以上に合併しているとも報告されています。また、不整脈も心房細動患者の約半数に睡眠時無呼吸を合併していると報告されています。心臓病の中でも特に心不全は睡眠時無呼吸症候群を合併している割合が多く、50〜70%と報告されています。虚血性心疾患と睡眠時無呼吸症はその起こす年齢や性別が似ており、高脂血症や肥満など同様な危険因子を持っています。しかし、年齢、性別、肥満度、喫煙、糖尿病などの因子を除外しても睡眠時無呼吸が虚血性心疾患の原因の一つであることがドイツやスウェーデンから報告されています。心血管疾患に合併する睡眠時無呼吸の多くは閉塞性睡眠時無呼吸症候群ですが、心不全では閉塞性と中枢性の両者を合併します。その機序は簡単ではありません。閉塞性睡眠時無呼吸症候群の患者は睡眠中に繰り返し起こる無呼吸および低呼吸が低酸素血症を引き起こします。①この低酸素血症が肺の酸素を取り込む血管を一時細くさせる生理反応を起こし、心臓から肺に向かう血流が渋滞し肺動脈圧が上昇します。これは心臓に負担をかけます。さらに、②睡眠中の上気道閉塞が努力呼吸となり、胸腔内圧を陰圧とさせ心臓に戻ってくる血流量が増加し、心臓に負担をかけます。また、③睡眠時無呼吸症候群はその無呼吸、低換気から息苦しくなり中途覚醒を起こすために交感神経が興奮し血圧が上昇します。これも心臓に負担をかけます。また、④無呼吸後の呼吸再開に伴う急激な酸素濃度の増量が、酸化ストレスとなり血管内の炎症を起こし、血栓が形成されやすくなり動脈硬化を促進させます。つまり睡眠時無呼吸症候群は心臓に対し、これら四重苦を作るとても危険な因子です。
閉塞性睡眠時無呼吸症が心臓病と強い関係があることは先に述べました。2011年にハーバード大学を含めたグループが1,452人の慢性いびき症を対象に検討し、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患は睡眠時無呼吸と関係を認めるも、無呼吸を伴わない単純いびき症との関係は認められなかったとしています。つまり、いびきをかいていることがすぐに心臓に負担がかかっていると不安がることはなさそうです。しかし、いびきがあり日中の眠気もある場合は睡眠時無呼吸症候群の可能性がありますので、専門医師に診察してもらうことを勧めます。
当院では、なぜいびきが生じているのかを診断しています。適応のある患者さんに対しては、レーザーによるいびき治療を保険診療で行っていますが、外科的な治療ばかりがいびき治療ではありません。肥満があり重症な睡眠時無呼吸をともなっている場合は、まず体重の減量とCPAP治療やマウスピース装用を勧めます。いびきについて悩んでおり、治療について診察を受けたい方は当院へ気軽にご相談ください。
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