マウスピースといびき
いびきは睡眠中に、鼻やのど(上気道)の狭い部分に空気がぶつかったり、振動したりしておこる異常な呼吸音です。睡眠時無呼吸症候群も多くは上気道が狭いために生じます。上気道が狭くなる理由はいろいろとあります。舌が大きかったり、下顎が形態的に小さいために舌が咽頭の方にはみ出してしまったり、飲酒などの影響で舌が落ち込みやすくなったりすることでいびきや睡眠時無呼吸症を生じることがあります。舌が咽頭に落ち込むことで舌と咽頭の後壁の空間が狭くなり、また喉頭蓋(こうとうがい)という蓋を押して呼吸の入口が狭くなり、いびきや無呼吸症状を起こします。このような場合は、寝相を横向き(側臥位)すると舌や喉頭蓋が重力で落ち込むのを防ぐことができ症状が軽減できます。しかし、人間は1時間に平均1~2回寝返りをうつため、側臥位で寝続けるのはなかなか難しいことです。また原因が舌にもかかわらず側臥位でもいびきの改善が認められない人もいます。強制的に下顎を前方に移動させ、舌と咽頭後壁の空間を拡げる方法としてマウスピース(スリープスプリント)は開発されてきました。小顎症で気道狭窄を認めることを報告したパリのPierre ROBIN先生が1902年に上気道狭窄の改善にマウスピースの使用を報告したのが始まりと考えられています。1980年シドニー大学のSullivan博士が睡眠時無呼吸症候群に対する持続陽圧呼吸療法(CPAP)を開発した数年後の1985年頃から睡眠時無呼吸症候群や慢性いびき症に対するマウスピース治療の症例報告が数多く発表されるようになってきました。これは、睡眠時無呼吸症候群治療の中心が外科的治療から保存的治療へ移ってきた中で、装用が煩雑で治療費がかさむCPAPより簡便なマウスピースが注目されてきたものと思われます。CPAPの装用継続率は60~70%と報告されています。1990年前後よりいびきに対する治療法としてもマウスピース治療が報告されるようになり、1995年頃にはいびき症や睡眠時無呼吸症の治療法として一般的に認められるようになりました。日本では2004年より歯科での睡眠時無呼吸症候群の治療としてスリープスプリントは健康保険の適応となり、1~2万円で作成することができます。
マウスピース(スリープスプリント)治療はCPAP治療のような大掛かりな装置は必要なく、手術治療のような侵襲を伴わない治療です。しかし、
誰にでも適応があるわけではありません。スリープスプリントを保険適用は睡眠時無呼吸症を対象としていますので「いびき」では適用されません。
「いびき」でスリープスプリントを作成する場合は自費となります。また、以下の様な症状がある場合、スリープスプリントのよい適応と考えられています。
1995年から2006年までに世界で報告されたマウスピース治療の141論文を検討した報告では、軽度から重度睡眠時無呼吸症の平均52%にマウスピース治療の効果が認められたとされています。しかし、重度睡眠時無呼吸症候群(特に無呼吸指数が40以上)の場合はスリープスプリントを治療の第一選択にすべきではないとしています。また、鼻中隔弯曲症やアレルギー性鼻炎による鼻閉がある場合や軟口蓋低位や口蓋垂肥大、口蓋扁桃の高度肥大を伴っている場合はスリープスプリントによるいびきや睡眠時無呼吸症の改善は難しいこともわかっています。
仰向け(仰臥位)で寝ると舌やのどちんこ(口蓋垂)を含めた軟口蓋が重力によって落ち込み、空気の通り道が狭くなることでいびきや睡眠時無呼吸症が生じます。閉塞性睡眠時無呼吸症候群の患者さんの起きているときと寝ているときのレントゲン写真を比較した王立ロンドン病院からの報告では、仰臥位では軟口蓋の部分で平均2.3mm、舌の部分で平均1.6mm前後径が狭くなることが示されています。それを改善するためには下顎を9~12mm前方に移動させる必要があります。顎関節に負担がかかるため、顎の痛み、起床時の口腔内の違和感などがマウスピース治療の副作用となります。しかし、携帯が便利でありCPAPに比べ装用が簡易なことから、軽度から中等度の睡眠時無呼吸症で手術治療を望まれない方はマウスピース治療を勧めます。
当院では、睡眠時無呼吸症の患者様にはアプノモニターを用いてその重症度を測定し、鼻腔通気度計を用いて鼻閉の具合、ファイバースコープを用いて咽頭の狭小の具合を客観的に評価します。アレルギー性鼻炎や肥厚性鼻炎による鼻閉がある場合はレーザーによる粘膜焼灼にて鼻閉の改善を試みます。鼻ポリープや鼻中隔弯曲症による鼻閉に対しても日帰り手術を行っています。口蓋垂の肥大、軟口蓋低位に対する咽頭狭小が認められる場合は、口蓋垂とその周辺部をレーザーで切除し、糸で縫い上げることで上気道を広くしていびきや睡眠時無呼吸を解消しています。すべて保険診療で行っています。下顎が小さかったり咬合不全があったりして、舌がのどに落ち込みやすくなり仰向けで寝るときに無呼吸となる体位性睡眠時無呼吸症に対しては歯科の先生と相談しマウスピース作成を行っています。既にマウスピースを作成し使用しているにもかかわらず、いびきや睡眠時無呼吸症の改善が認められない場合は鼻閉や咽頭狭窄が高度である可能性があります。お気軽にご相談ください。
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