逆流性食道炎といびき
さまざまな原因によって頻繁に胃の内容物が食道へ逆流すると、胃酸によって胸やけや口の中の酸っぱい感じ(呑酸)、のどの違和感、胸痛などが生じます。この胃酸によって食道の粘膜がただれてしまうのが逆流性食道炎です。しかし、症状があっても食道炎を認めない場合や、食道炎があっても症状が軽い場合もあるので最近では逆流性食道炎も含め「胃の内容物が食道へ逆流しておこる病気」を胃食道逆流症(gastro-esophageal reflux disease:GERD〈ガード〉)といいます。
内視鏡検査で診断がつきやすい逆流性食道炎の頻度は欧米では10~20%と報告されています。日本でも食生活をはじめとする生活習慣の欧米化に伴い1990年頃から罹患率が増加していることが報告されています。2008年の東北大学からの報告では60歳以上の約20%にGERDを認めており、ほぼ欧米と同じ頻度を示しています。胃酸が逆流するメカニズムは、①食道と胃のつなぎ目である噴門(ふんもん)が問題を起こしてなる場合(暴飲暴食、高脂肪食、妊娠、肥満、食道裂孔ヘルニアなど)、②胃の中に酸が多い場合、③食道の粘膜が敏感になっていて胃酸が少し逆流しても反応してしまう場合(ストレスなど)、があります。
海外の疫学研究において、GERDと睡眠障害とに関係があることは今までに多く報告されています。日本でも胸やけをともなう患者さんの50%以上に睡眠障害を認めると報告されています。胸やけ症状が睡眠中に意識を覚醒させ、中途覚醒や熟睡障害を起こし睡眠障害になると考えられています。逆に睡眠を障害させると、健常な人でも食道内の酸性度が上がることもアメリカによる研究から最近報告されています。このようにGERDと睡眠障害はお互い関連していることが現在わかってきています。
睡眠障害を起こす要因の1つに睡眠時無呼吸症候群があります。睡眠時無呼吸症候群の患者さんはいびき症状を90〜98%持っており、いびきと睡眠時無呼吸症候群は強く関係しています。閉塞性睡眠時無呼吸症候群とGERDの関連は今まで多数報告されています。日本でも、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の患者さんがGERDを持っている有病率は2009年に大阪市立大学から20〜40%と報告されており、先に述べた一般的な罹患率より高率であることがわかります。睡眠時無呼吸症候群の患者さんが、なぜGERDを多く併発するのかはまだ完全に解明されていません。閉塞性睡眠時無呼吸症を持つ人の70%が肥満であり、逆に肥満を持つ人の約40%に閉塞性睡眠時無呼吸症を認めるとアメリカから報告されています。肥満とGERDの関係も数多く報告されています。肥満度が上がるとGERD罹患率も高くなり、肥満3度だとGERD罹患率が50%とアメリカから報告されています。脂肪により胃が圧迫を受けたり、下部食道括約筋が弛緩したりして胃酸が逆流しやすくなるのがその原因と考えられています。このことから、単純に太っているからGERDにも睡眠時無呼吸症候群にもなるとも考えられ、今でもGERDと睡眠時無呼吸症候群の関係を疑問視する議論が続いています。2019年世界の報告をメタ解析した中国からの報告では、肥満とは関係なくGERDと睡眠時無呼吸症候群の関係を認めています。上気道狭窄が気管内圧を低下し気管と隣同士である食道内への酸逆流を助長させる、一過性下部食道括約筋が弛緩し逆流が生じるなどがその原因と報告されています。また、胃酸逆流が上気道粘膜を浮腫させ上気道狭窄を起こし、閉塞性睡眠時無呼吸症候群を助長させることも報告されています。このように、GERDがある人がいびきを持っている場合、睡眠時無呼吸症候群を併発している可能性があります。心配になったら睡眠時無呼吸の検査をしている医療機関の受診を勧めます。
当院では、なぜいびきが生じているのかを診断しています。適応のある患者さんに対しては、レーザーによるいびき治療を保険診療で行っていますが、外科的な治療ばかりがいびき治療ではありません。BMIが30以上の肥満があり重症な睡眠時無呼吸をともなっている場合は、まず体重の減量とCPAP治療やマウスピース装用を勧めます。いびきについて悩んでおり、治療について診察を受けたい方は当院へ気軽にご相談ください。
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