いびきの運動療法
いびきの運動療法は大きく分けると2つに分けられます。一つは体重を減量させるエクササイズであり、もう一つは空気の通り道である気道の空間を拡げるための口腔咽頭のエクササイズです。
呼吸の通り道(気道)が狭く無呼吸となる閉塞性睡眠時無呼吸症は、睡眠中の呼吸停止や低換気によって日中の眠気、集中力の低下や疲労などの症状を起こします。狭くなっている部分を一定の空気圧で拡げる持続陽圧呼吸療法(CPAP)は、睡眠時無呼吸症候群に対して最も有効な治療であることは世界で既に証明されています。特に無呼吸低呼吸指数(AHI)が30以上の重度症例には効果が高いことも報告されています。しかし、AHIが30未満の人には必ずしもCPAPが第一選択となるわけではなく、マウスピース治療や外科治療の適応となることもあります。外科治療やマウスピース治療は、痛みをともなうばかりでなく時間や費用もかかることから、もっと容易に無呼吸の改善ができる治療法として口腔咽頭エクササイズは発展してきました。1980年にオーストラリアのシドニー大学でCPAP療法が開発されました。その同じオーストラリア大陸の先住民アボリジニの楽器ディジュリドゥ奏者にいびきや睡眠時無呼吸症状の軽減することを、スイスのチューリッヒ大学病院の先生が気付き、2005年に報告したことから世界で注目されるようになりました。この報告では、ディジュリドゥの練習を1日25分、週に6日行い4ヶ月後にAHIの低下を認め、上気道の筋肉をきたえたことがその効果を示したものと考えています。
1995年頃より、動物または人を対象とした研究ではオトガイ舌筋に電気刺激を行い、筋肉を収縮させ、舌を前方に移動させることにより呼吸抵抗が下がり、呼吸が楽になる報告がされてきました。その後、電気刺激を繰り返すことによりいびきや睡眠時無呼吸の症状が軽減した報告がいくつかでています。しかし、特殊な器具用いた電気刺激は一般的に普及しませんでした。そこに先に示したディジュリドゥ演奏の報告があり、改めて口腔咽頭エクササイズに脚光が浴びるようになりました。その後、口腔咽頭エクササイズの報告はいくつかされ、睡眠時無呼吸やいびき症状の改善が認められたとされています。2015年米国スタンフォード大学の研究チームが今まで報告された研究の客観性を調べ、睡眠時無呼吸に対する口腔咽頭エクササイズの有効性を検討しました。その結果、成人の睡眠時無呼吸症候群の約50%に改善が認められたと報告しています。2017年ハワイの陸軍病院にて過去の約480の論文をメタ解析したところ、いびきも約50%の改善が認められたと報告しています。
つまり、口腔咽頭エクササイズは「いびき」も「睡眠時無呼吸」も改善させる方法として有効であることが証明されたことになります。また口腔咽頭エクササイズは、「いびき」の予防としても有効な方法とも考えられています。
いびきは睡眠中に、鼻やのどの狭い部分に空気がぶつかり振動することによっておこる異常な呼吸音です。口を開けた時に空気の通り道を拡げる筋肉は、舌骨に付いている舌骨筋群、舌の動きに関係する舌筋(茎突舌筋、舌骨舌筋、オトガイ舌筋)、口蓋垂(のどちんこ)周囲の軟口蓋を持ち上げる筋(口蓋帆挙筋、口蓋帆張筋、口蓋垂筋)が関与しています。特に、睡眠中に鼻呼吸ができていれば舌筋が、口呼吸になっているようならば舌筋と軟口蓋の筋が空気の通り道に関与しています。そのために、口腔咽頭エクササイズもこれらの筋肉を鍛えることを目的としています。
ここで当院で行っている簡単な口腔咽頭エクササイズの方法を紹介します。毎食後の歯磨き後に行うことで習慣化できます。1から7を順番に行います。
いびきは様々な原因から生じています。多くの人は、いびきの原因は1つではありません。エクササイズをしていてもいびきの改善が認められない場合は、鼻やのどが何らかの原因で狭くなっている可能性があります。耳鼻咽喉科医に診察してもらうことを勧めます。
当院では、レーザーによるいびき治療を保険診療で行っており、口蓋垂とその周辺の軟口蓋を切除し糸で縫い上げることで上気道を広くし、いびきや睡眠中の呼吸状態を改善します。BMIが30以上の肥満があり睡眠時無呼吸を伴っている場合は、まず体重の減量とCPAP治療やマウスピース装用を勧めます。体位性睡眠時無呼吸の場合はマウスピースを用いた治療を勧めます。CPAPやマウスピースの装用が困難であった方やいびきや睡眠時無呼吸の治療について診察を受けたい方は当院へ気軽にご相談ください。
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