いびきとアプリ
いびきを指摘されたり自分でいびきが気になり、病院を受診すると睡眠時無呼吸の検査を受けて異常がないと診断され、いびきは気にしなくて良いと言われしまい帰される経験をしたことはないでしょうか。睡眠時無呼吸症候群の患者さんはいびき症状を9割持っていて、逆に慢性いびき症の3割に睡眠時無呼吸症を持つと報告されています。
このように、いびきと睡眠時無呼吸症候群は決して同じものではありません。今回はいびきの検査の難しさ、そして最近あるスマホのアプリを用いたいびき測定についてお話しします。はじめに、病院で行う睡眠時無呼吸検査とはどのようなものでしょうか?
睡眠時無呼吸症候群の検査方法は現在すでに確立しています。その精度によってレベル1からレベル4まで検査法があります。レベル1が最も無呼吸の状態を正確に測定できます。
レベル4は血中の酸素飽和度(簡単にいうと血の中の酸素の濃度であり、呼吸によって変動します)を簡易的に測定するパルスオキシメーターを用いて、酸素飽和度が3%低下するところを見つけます。その回数を測定して無呼吸指数を推測します。無呼吸指数の数値によって睡眠時無呼吸症候群を診断します。
レベル3は血中の酸素飽和度を測定すると同時に鼻口気流、胸部または腹部の呼吸運動、気管音を測定することで無呼吸指数を示すものです。レベル4に比較してより正確に無呼吸指数を示すことができます。しかし実際には脳波を測定していないことから睡眠時間や睡眠の質が判定できないため、正確な無呼吸指数の算出が難しいです。
レベル2はレベル3に心電図、体位測定ができる簡易検査です。
最も正確に無呼吸が診断できるレベル1はポリソムノグラフィーです。脳波、眼球運動、オトガイ筋電図にて睡眠の質を測定し、鼻口気流、胸腹部の換気運動、心電図、パルスオキシメーターで呼吸の状態を測定する検査です。ただし、病院に最低でも一泊して測定しなくてはいけない煩わしさがあり、検査費用も高価です。
睡眠時無呼吸検査のレベル3以上になると圧力センサーで同時にいびきを測定することができます。この測定はいびきの振動を測定するものであり、実際のいびき症状とやや解離があります。
いびきが問題になるのは、主としてそのいびきが他人の睡眠を障害する場合です。そのため、いびき症状の程度をみるのにベッドパートナーの迷惑度を質問紙を用いて調べる方法が現在まで一般的です。しかし、この方法はベッドパートナーの主観的な判定であることから、音に対して敏感なパートナーと鈍感なパートナーとでは同じいびき音に対して判定が異なります。また、同じパートナーであってもその時のパートナーの心理状況によっては音の敏感度が変わることがあります。つまり、パートナーがとても疲れている時は音に関係なく寝られますが、イライラして興奮している時はそのいびき音に対してとても敏感になるわけです。主観的な判定方法と客観的な判定方法とでは差が生じる理由がここにあります。このように、いびきの検査方法は現在まで確立していません。
いびきの音を直接的に録音して解析する方法は以前より研究されてきました。しかし、大掛かりな録音セットや複雑な解析ソフトが必要で一般的ではありませんでした。会議や授業内容または会話を録音するためのICレコーダーでいびきを録音した場合は、再生するときにいびきの部位を探すのに苦労することが多く、日々のいびきを測定するには難しいです。
最近のスマートフォンのアプリを使うと、いびき音を簡単に録音することができます。現在までに多くのいびきアプリが販売されています。2015年にアメリカのスタンフォード大学の研究チームが126のスマホアプリを検討し、2つのアプリの有用性を報告しています。
Quit snoring (Snoring U): Pointer Software Systems 社とSnore Monitor Sleep Lab :Adactive AB 社です。いびき音を簡単に録音でき、秒単位で再生が可能であり、グラフ化することでいびきを起こしている時を容易に判断できるとしています。当院では、いびきラボ:Reviva Softworks 社もいびき評価に用いています。いびきラボは秒単位での再生が難しいですが、一晩におけるいびきの動態が把握しやすく、音の再生が簡単なためです。いびきラボは無料版もあるのでいびきが気になったら、確認のために試しに測定することもできます。
アプリを用いていびきを測定するときに気をつけてもらいたいことが二つあります。
一つ目はスマートフォンのケースを外して測定することです。スマートフォンのマイクは大半は下面についていますが、ケースによってはマイクがカバーされてうまく計測できない時があります。
二つ目はスマートフォンの位置です。マイクを音源に近づければ音が大きく録音できるのは当然ですが、パートナーは基本的にそんなに近くで寝ていません。顔面から約30cm離して測定することが勧められています。30cmを測定するのがわずらわしい場合は、頭の上に置く場合は腕を伸ばした位置、横に置く場合は腕を伸ばした状態で肘と手との間に置くと良いです。
録音していびきが気になるようでしたら、医療機関を受診してください。
当院では、なぜいびきが生じているのかを診断しています。適応のある患者さんに対しては、レーザーによるいびき治療を保険診療で行っていますが、外科的な治療ばかりがいびき治療ではありません。BMIが30以上の肥満があり睡眠時無呼吸をともなっている場合は、まず体重の減量とCPAP治療やマウスピース装用を勧めます。いびきについて悩んでおり、治療について診察を受けたい方は当院へ気軽にご相談ください。
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