緑内障といびき
2006年厚生労働省の身体障害者手帳所有者をもとにした調べでは、日本の視覚障害者数は31.2万人ですが、日本眼科医会研究班による2009年の報告では2007年の視覚障害者は164万人存在すると推定しています。この報告では、失明者は18万8千人としています。
失明とは、よく見える方の眼の矯正視力が0.1以下のことを言います。緑内障は日本における最大の中途失明の原因です。
2000~2002年に行われた詳細な緑内障疫学調査では40歳以上の日本人における緑内障の有病率は5%と報告されており、また70歳以上では10%とも報告されていることから、2021年の人口統計をもとに計算すると推定患者数は532万人となります。
緑内障は、何らかの原因により見るための神経(視神経)が障害を受け、見える範囲(視野)が狭くなる病気です。初期の段階では、「目が疲れる」、「肩がこる」、「頭痛」などの症状を訴えることがあります。
緑内障の原因は現在も明確にわかっていません。その原因の一つに眼圧の上昇があります。眼の中では角膜や水晶体に栄養を与えるために房水という水が流れています。房水は虹彩の裏側で作られ瞳孔を通り表側に出て、表側の虹彩の付け根(隅角:ぐうかく)にあるシュレム管という排水管から排出されます。この房水の作られる量と排出される量のバランスによって目の固さ、眼圧が決まります。眼圧は10-20mmHgが正常範囲ですが、20mmHgを超えるような眼圧が持続していると、視神経が障害される可能性があります。
緑内障はいくつかの種類に分類されています。けがや目の炎症、糖尿病などで眼圧が上がる「続発緑内障」、明らかな原因がない「原発緑内障」、生まれつき眼圧が高い「発達緑内障」などがあります。原発緑内障の中には、房水の出口である隅角が狭い「閉塞隅角緑内障」と隅角が広い「開放隅角緑内障」があります。また、眼圧が高くないにもかかわらず視神経が障害される「正常眼圧緑内障」も存在します。
日本人では眼圧が高い緑内障よりも眼圧が高くない正常眼圧緑内障が非常に多く、緑内障患者さん全体の70%以上を占めると報告されています。正常眼圧緑内障は、視神経が弱い、神経の血流が少ない、視神経に毒として働く物質がある、免疫異常などがその原因と考えられていますが、いまだに解明されていません。
緑内障の視神経障害および視野障害は、患者さんの自覚なしに障害が徐々に進行するため、その早期発見と早期治療による障害の進行を止めるまたは予防することが重要課題であると、緑内障診療ガイドラインに示されています。
緑内障と閉塞性睡眠時無呼吸症候群の関係を示した最初の論文は1982年カナダからで、遺伝性の緑内障の家族を検討したところ、睡眠時無呼吸症候群を伴っていることが多いことを報告し、世界の注目を集めました。その後、各国から両疾患の関係を示した報告が多くでています。
2003年イスラエルから睡眠時無呼吸症候群228名を検討したら緑内障の有病率が2%と高くないとの報告もありますが、2015年中国による過去の報告をメタ解析した結果では、閉塞性睡眠時無呼吸症候群のある人は無呼吸を伴っていない人と比較して緑内障の有病率が1.6倍高く、アジア人では1.78倍、白人では2.03倍高いと報告しています。この論文では、重症な睡眠時無呼吸症候群の緑内障の有病率は5.49倍と高いことも報告しています。
2016年北海道大学の研究グループが持続的に眼圧を測定する装置を用いて閉塞性睡眠時無呼吸症候群の患者さんを測定したら、睡眠中の無呼吸時に眼圧が下がることを示し、睡眠時無呼吸症候群が緑内障を起こすメカニズムは眼圧よりも循環不全による可能性が高いことを示しました。
実際に、2018年イタリアローマ大学が重度睡眠時無呼吸症候群の視覚機能を電気的に検査し、持続陽圧呼吸療法(CPAP)を1年間良好に行えた10名とうまく装用ができなかった10名で比較すると、CPAPが良好に行えた人の視覚機能の改善が認められたと報告しています。これは、CPAPにて血中の酸素濃度が改善し視神経の血流や炎症が改善したことによると考えられています。
睡眠時無呼吸症候群の患者さんはいびきを90%以上持っていて、逆に慢性いびき症の約30%に睡眠時無呼吸症を持つと報告されています。このようにいびきと睡眠時無呼吸症候群は強く関係しています。
2014年中国首都医科大学が50歳以上の3,146名を対象に検討したところ、いびき症状と緑内障の有病に明らかな関係を認めていません。つまり、いびきがあることですぐに緑内障を心配する必要はないということです。
しかし、いびきがあり日中の眠気を自覚している場合は、睡眠時無呼吸症候群の可能性があり、一度専門の医師に診察してもらうことを勧めます。また、重度な睡眠時無呼吸症候群が診断された場合は、緑内障を併発している可能性があり、眼科でチェックしてもらうと安心です。
当院では、なぜいびきが生じているのかを診断しています。
適応のある患者さんに対しては、レーザーによるいびき治療を保険診療で行っていますが、外科的な治療ばかりがいびき治療ではありません。肥満があり重症な睡眠時無呼吸をともなっている場合は、まず体重の減量とCPAP治療やマウスピース装用を勧めます。
いびきについて悩んでおり、治療について診察を受けたい方は当院へ気軽にご相談ください。
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