妊娠といびき
当院を受診されるいびきの患者さんの中には、妊娠中の方もいらっしゃいます。
ネット上でも妊婦さんがいびきについて質問をしているのを見かけますが、妊娠によっていびき症状が出現するのでしょうか?また、いびきは妊娠に影響を与えるのでしょうか?
今回は妊婦さんのいびきについてお話しします。
女性は更年期になるまで、男性と比較していびきを持つ割合が低いことが過去の報告からわかっています。20〜30歳代の女性の慢性いびき症の罹患率は5〜8%と報告されています。しかし、妊婦さんは妊娠初期に約10%、妊娠後期になると約20〜25%に慢性いびき症を認められ、いびき有症率が同世代の女性と比較して高いことがわかります。

2016年中国の研究にて、妊婦さん3,079名を対象に調べ妊娠中に16.6%にいびき症状が認められ、その70%が妊娠する前にいびきが無いことが示されています。つまり、妊娠によっていびき症状が出てくることがわかります。
また、2015年米国から2,427名の妊婦さんを調べると19%に睡眠呼吸障害が認められたと報告されています。いびきばかりでなく睡眠時無呼吸症候群も妊娠とともに出てくることがわかります。
妊婦さんがいびきをかきやすくなり、睡眠時無呼吸症候群になるのか現在でも明確にはわかっていません。睡眠時無呼吸症候群には、脳が関与している中枢性と空気の通り道(気道)が狭くなって生じる閉塞性があります。2015年米国ブラウン大学から中枢性睡眠時無呼吸症候群の罹患率が、妊婦さんには増加しないことが報告されています。つまり妊婦さんのいびきや睡眠時無呼吸症状は、気道が狭くなるのが主な原因と考えられています。妊婦さんの気道がなぜ狭くなるのか、いくつかの要因が現在まで報告されています。
まず、妊婦さんは将来的な授乳に備えて皮下脂肪にエネルギーを蓄えるため、皮下脂肪が増加します。首回りに脂肪が貯まると気道が狭くなります。
妊娠によってエストロゲンやプロゲステロンなどの女性ホルモンが増加することにより、気道内の毛細血管が拡張し分泌液が増加することにより粘膜浮腫が生じます。そのために鼻やのどの空気の通り道が狭くなります。実際に、アレルギー性鼻炎を持っていない妊婦さんでも妊娠末期に42%が鼻閉を感じることを2013年ポーランドから報告されています。
また、妊娠末期になると妊婦さんの循環血液量は40〜50%増加するため、横になると鼻やのどが鬱血しやすくなり気道が狭くなると予想されています。
そして、妊娠末期になりお腹が大きくなると子宮が肺を圧迫し、呼吸が苦しくなることも原因と1つとして考えられています。
では、いびきや睡眠時無呼吸が妊婦さんにどのような影響を与えるのでしょうか?

2014年カナダの研究にて4,386もの世界の論文を検討したメタ解析で、妊娠中に睡眠時無呼吸症候群を認める場合、妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群になる確率は2倍になることを報告されています。これらは、妊婦さんやお腹の赤ちゃんに大きな影響を与える可能性があり注意を要します。そのために、中等度から重度の睡眠時無呼吸症候群が妊娠中に認められる場合は、睡眠呼吸障害の専門家のサポートが必要となります。
妊娠前に、肥満、高血圧または週に3日以上のいびき症状がある場合や高齢出産の場合は妊娠中の睡眠時無呼吸症候群となる確率が高くなることが報告されています。心配な方は、妊娠の前に睡眠時無呼吸を診断してくれるお近くの病院に受診することをお勧めします。
当院では、なぜいびきが生じているのかを診断しています。適応のある患者さんに対しては、レーザーによるいびき治療を保険診療で行っていますが、外科的な治療ばかりがいびき治療ではありません。肥満があり重症な睡眠時無呼吸をともなっている場合は、まず体重の減量とCPAP治療やマウスピース装用を勧めます。
いびきについて悩んでおり、治療について診察を受けたい方は当院へ気軽にご相談ください。
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