性機能障害といびき
性機能障害とは、性欲・勃起・性交・射精・オルガズム(極致感)・潤滑・痛みなど、性反応のどこかに問題があり、本人が苦痛を感じたり性生活に支障が出る状態の総称です。
男性では主にED(勃起障害)や射精障害、女性では欲求・興奮・オルガズム・疼痛の障害が含まれます。

世界的に、生殖年齢のあるカップルが不妊症である割合は、先進国では10〜15%と報告され、日本でも不妊の検査や治療を受けたことがある夫婦は18.2%と報告されています。
不妊の原因が男性または女性である割合は、50%ずつであることがわかっています。厚生労働省の平成27年度全国調査では男性要因の不妊症の13.5%に性機能障害を認めると報告しています。
女性要因の不妊症における性機能障害の頻度は報告されていませんが、一般的な女性の性機能障害(FSD)の頻度は、おおむね30~50%前後とされており、2016年ドイツのレーゲンスブルク大学による過去に報告された440論文のメタ解析では、閉経前女性におけるFSDの有病率は40.9%と報告しています。
つまり、男性より女性における性機能障害の割合が高いことがわかります。
性機能障害は、心因性だけでなく血管性・内分泌/代謝性・神経性・薬剤性・泌尿生殖器/骨盤底要因など様々な原因が重なることが多く、泌尿器科、婦人科、精神科・心療内科、総合内科などで診察してもらう必要性があります。
男性ではEDが心血管・糖尿病リスクの早期徴候になりやすく、女性では身体・精神・パートナーとの関係性の要因が多因子的に関与すると考えられています。最も多いのは、慢性疾患と心理社会的要因、さらに薬剤が重なるパターンです。
加齢、糖尿病、高血圧、喫煙、抑うつ、対人関係ストレスは男女ともED/FSDと強く関連しています。薬剤としては、抗精神病薬、抗うつ薬、利尿薬などが性機能障害の要因となります。1977年米国、スタンフォード大学から睡眠障害とEDの関係性が示されてから、各国から睡眠障害と性機能障害の関係が報告されています。

2015年台湾、高雄医学大学にて台湾国民健康保険(NHI)データベースを用いた研究で、約5,000人の睡眠時無呼吸症候群を対象に検討したところ、睡眠時無呼吸症候群のない人と比較して、EDの有病率が2.0倍高いことを報告しています。また、2025年中国人民解放軍陸軍軍医大学の第三附属医院による過去に報告された論文のメタ解析にて、睡眠時無呼吸症候群のある130万人の女性を検討したところ、睡眠時無呼吸のない女性と比較してFSDの有病率が2.5倍高いことを示しています。
このように、性機能障害と睡眠時無呼吸症候群の関係が示されています。
では、なぜ睡眠時無呼吸症候群に性機能障害の有病率が高くなるのでしょうか?
まず、性機能障害の原因となる糖尿病、高血圧、うつ病は睡眠時無呼吸症候群と関係があります。睡眠時無呼吸症候群と診断されている人は、糖尿病となる確率が通常の約4倍高いと報告されています。うつ病の有病率も通常の2倍以上高いことが報告されています。また、高血圧症の30〜60%に睡眠時無呼吸症候群を認めると報告されています。
睡眠時無呼吸症候群は睡眠中に空気の通り道(気道)が何度も閉塞して「無呼吸・低呼吸」を起こし、呼吸が苦しくなることから繰り返し脳が小さく覚醒します。そのために睡眠が細切れになり(断片化)、深い睡眠が減って「熟睡感のない睡眠」になりやすく、睡眠の質が低下します。
睡眠の質が悪くなると、男性の場合は視床下部―下垂体―精巣系の働きが落ちテストステロンの低下することが報告されています。テストステロンの低下は性欲低下、夜間勃起の減少、性交満足度低下を起こすとことが示されています。
睡眠の質の低下が女性に与える機序は複雑です。睡眠の断片化が、①交感神経を刺激、②不安や疲労を起こしやすくなり、③エストロゲン・プロゲステロンなどのホルモン変動を起こし、④炎症・血管内皮機能の低下を起こし、これらの結果として膣・外陰部の血管拡張が起こりにくくなり、潤滑低下や興奮の低下を起こすと考えられています。
2024年中国、南京医科大学による、公開されているゲノムワイド関連解析の約45万人のデータをメンデルランダム化解析したところ、いびきの増加がEDのリスク増加と関連していることが示されました。
睡眠時無呼吸症候群の患者さんはいびき症状を90%以上持っていて、逆に慢性いびき症の約30%に睡眠時無呼吸症を持つと報告されています。また、睡眠時無呼吸を持つ人のいびき音は無呼吸を持っていない人のいびき音と比べて大きいと報告されています。
つまり、大きないびきをしている場合、睡眠時無呼吸症候群となっている可能性が高くなり、性機能障害のリスクが増加したものと予想されます。
日本性機能学会の2018年出版のED診療ガイドラインにて、睡眠時無呼吸症候群を有するED患者さんに対して勃起機能改善を目的として無呼吸の治療であるCPAPを使用することが強く推奨されています。
2021年台湾、慈済大学から、睡眠時無呼吸症候群に対し外科治療された約8千人の患者、未治療の3千人の患者対照群を分析し、外科的治療がEDを発症するリスクを21%低下させることを報告しています。つまり、睡眠時無呼吸症候群を伴っている性機能障害の患者さんに対して、睡眠時無呼吸の治療が性機能障害を改善させる可能性があることがわかります。
いびきがあり、性機能障害を自分で、またはパートナーに感じる場合は、睡眠時無呼吸症候群を疑い、近くの専門医師に診察してもらうことを勧めます。
当院では、なぜいびきが生じているのかを診断しています。
適応のある患者さんに対しては、レーザーによるいびき治療を保険診療で行っていますが、外科的な治療ばかりがいびき治療ではありません。
肥満があり重症な睡眠時無呼吸をともなっている場合は、まず体重の減量とCPAP治療やマウスピース装用を勧めます。
いびきについて悩んでおり、治療について診察を受けたい方は当院へ気軽にご相談ください。
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